
Obsidianを使っていると、PCで書いたメモをiPhoneやAndroidなどのスマホでも見たい、あるいはチームメンバーと情報を共有して共同編集したいという場面が出てきますよね。でも、Obsidianはローカル保存が基本のアプリなので、GoogleドライブやiCloudを使ってどうやって同期すればいいのか、無料の方法はあるのかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。また、リアルタイムでの共同編集ができるのかどうかも気になるところです。この記事では、Obsidianのデータを複数のデバイス間でスムーズに共有する仕組みや、トラブルが起きにくい同期の設定方法について詳しく解説していきます。
- PCとスマートフォン間でデータを安全に同期する具体的な手順がわかる
- チームや複数人でObsidianのノートを共有・管理する最適な方法が理解できる
- GoogleドライブやiCloudを使った同期のメリットと注意点が把握できる
- Web公開機能を使って自分の知識をデジタルガーデンとして発信する手法がわかる
Obsidianでデータを共有・同期する基本知識
Obsidianは単なるメモアプリではなく、あなたの思考を長期的に保存するための「知識の保管庫」です。しかし、その特殊なデータ構造ゆえに、一般的なクラウドサービスとは異なる「共有」や「同期」のアプローチが必要になります。まずは、なぜObsidianの同期が一筋縄ではいかないのか、その根本的な仕組みから理解していきましょう。ここを理解しておくと、後でトラブルが起きたときの対処法が劇的にわかりやすくなります。
PCとスマホ間でノートを共有する仕組み
まず大前提として、Obsidianにおける「データ管理」の思想について深く理解しておく必要があります。私たちが普段使い慣れているNotionやEvernote、Google Keepといったアプリは、基本的に「クラウドファースト」です。アプリを開いて文字を入力した瞬間、そのデータはインターネットの向こう側にある企業のサーバーに送信され、データベースに格納されます。だからこそ、どの端末からログインしても同じデータが見えるのは「当たり前」の機能として提供されています。
しかし、Obsidianは「ローカルファースト」という哲学を掲げています。これは、「あなたのデータは、あなたのデバイス(PCやスマホ)の中に物理的に存在するべきだ」という考え方です。Obsidianで作成したノートは、独自のデータベースではなく、単純な「Markdownファイル(.md)」として、あなたのパソコンのフォルダの中に保存されます。このフォルダの集まりを「Vault(保管庫)」と呼びます。
つまり、PCとスマホで同じノートを編集したいということは、この「Vaultフォルダ」の中身を、何らかの方法で物理的にコピーし合い、常に最新の状態に保つ必要があるということです。イメージとしては、USBメモリにデータを入れてPCからスマホへデータを移動させる作業を、インターネット回線を使って全自動で行うようなものです。
ローカルファーストのメリットとデメリット
- メリット: インターネットがないオフライン環境でも爆速で動作します。また、サービスが終了しても手元にファイルが残るため、データが人質に取られることがありません。
- デメリット: 自分で「同期の仕組み」を用意しない限り、PCで書いたメモはスマホには反映されません。同期の設定をミスすると、ファイルの競合(コンフリクト)が起きやすくなります。
この仕組みは一見不便に思えるかもしれませんが、「自分のデータを自分で完全にコントロールできる」という点において、セキュリティ意識の高いユーザーや研究者、ライターから絶大な支持を得ています。同期の方法さえ確立してしまえば、クラウドアプリのような利便性と、ローカルアプリの堅牢性を両立させることができるのです。
iPhoneやAndroidと同期する手順
では、具体的にどうやってPCにあるデータをスマートフォンと同期させればよいのでしょうか。ここで最大の壁となるのが、スマートフォン(特にiPhoneなどのiOSデバイス)が持っている「セキュリティ制限」です。
PC(WindowsやMac)は、ユーザーが自由にファイルやフォルダを操作できますが、スマホのアプリは「サンドボックス」という隔離された箱の中で動いており、他のアプリのデータやシステム領域に勝手にアクセスすることが禁じられています。そのため、単にPCからスマホにファイルを送るだけでは、Obsidianアプリからそれを開くことができないのです。
iPhone (iOS) ユーザーの場合
iPhoneを使っている場合、最も標準的でトラブルが少ない(それでもゼロではありませんが)方法は、Apple純正のクラウドストレージである「iCloud Drive」を使用することです。
- PC(MacまたはWindows)にiCloudを導入し、iCloud Driveの中にObsidian用のVaultフォルダを作成します。
- iPhoneにObsidianアプリをインストールします。
- iPhoneのアプリ起動時に、「新しいVaultを作成」ではなく「既存のVaultを開く」を選択し、iCloud Drive内の該当フォルダを指定します。
これで、iOSのファイルシステム制限を守りつつ、PCとデータを共有することが可能になります。ただし、WindowsとiPhoneの組み合わせでは同期の遅延問題が頻発するため、後述する対策が必要です。
Android ユーザーの場合
AndroidはiOSに比べてファイル操作の自由度が高いため、選択肢が豊富です。Googleドライブ、Dropbox、OneDriveなど、お好みのクラウドストレージを使うことができますが、Obsidianアプリ自体にはそれらに接続する機能はありません。そのため、「同期専用のアプリ」を仲介させる方法が一般的です。
- PC側で、Googleドライブなどのフォルダ内にVaultを作成します。
- Android端末に「Autosync for Google Drive」(DropboxならDropsync)などのサードパーティ製同期アプリをインストールします。
- 同期アプリを設定し、クラウド上のVaultフォルダと、Android端末内のローカルフォルダを「双方向同期(Two-way sync)」させます。
- Obsidianアプリで、Android内のそのローカルフォルダをVaultとして開きます。
この方法なら、Obsidian自体はローカルファイルを読み書きしているだけなので動作が軽く、同期アプリが裏側でせっせとクラウドと通信を行ってくれます。少し設定は複雑ですが、無料で安定した環境を構築できるのが魅力です。
同期タイミングによる事故に注意 これらのOS標準機能やサードパーティアプリを使った同期は、「リアルタイム」ではありません。PCで編集を終えてすぐにスマホを開くと、まだ同期が完了しておらず古いファイルが表示されることがあります。そのまま編集してしまうと、PC側の変更とスマホ側の変更がぶつかり、データが消えたり重複したりする「競合」の原因になります。必ず同期完了を確認してから書き始める癖をつけましょう。
公式Syncで安全にデータを共有する方法
ここまで紹介した方法は、いわば「工夫して無料で同期する方法」ですが、正直なところ設定が面倒だったり、トラブル対応に時間を取られたりすることがあります。「難しいことは考えたくない」「仕事で使うからデータの安全性と確実性を最優先したい」という方には、開発元が提供している有料サービス「Obsidian Sync」の利用を強くおすすめします。
私自身、最初は「たかが同期に毎月お金を払うなんて…」と抵抗があり、無料の方法を試行錯誤していました。しかし、ある時同期ミスで大切なアイデアメモを消失してしまい、それを機にSyncを契約しました。結果として、その快適さと安心感は価格以上の価値があると実感しています。
エンドツーエンド暗号化(E2EE)による鉄壁の守り
Obsidian Syncの最大の特徴は、軍事レベルのセキュリティです。あなたのデバイスからデータが送信される際、必ずあなたの設定したパスワードで暗号化されてからサーバーへ送られます(エンドツーエンド暗号化)。
これは何を意味するかというと、「Obsidianの開発チームであっても、サーバー管理者であっても、あなたのノートの中身を見ることは技術的に不可能」だということです。GoogleドライブやiCloudの場合、サービス提供側は(規約上見ないことにはなっていますが)技術的にはデータにアクセス可能です。しかしObsidian Syncなら、秘密の日記も、企業の機密情報も、誰にも覗かれる心配はありません。
バージョン履歴と競合解決のスマートさ
もう一つの大きなメリットが「バージョン履歴」機能です。Standardプランなら1ヶ月、Plusプランなら12ヶ月前まで遡って、ファイルの変更履歴を保存してくれます。「間違って文章を全削除してしまった!」「同期がおかしくて先週の状態に戻したい」という時も、スライダーを動かすだけで瞬時に過去の状態を復元できます。これは外部のクラウドストレージではなかなか真似できない、テキストエディタならではのきめ細かい機能です。
また、もし同期の競合(PCとスマホで同時に同じ場所を編集してしまった場合など)が起きても、Obsidian Syncは可能な限り自動でマージ(統合)しようと試みます。どうしても統合できない場合は、両方のデータを別ファイルとして残してくれるので、データが勝手に上書きされて消えるという最悪の事態を防いでくれます。
| 機能 | Standard Plan | Plus Plan |
|---|---|---|
| 月額料金 | $4 (年払い) | $8 (年払い) |
| 同期可能なVault数 | 1つ | 10つ |
| バージョン履歴 | 1ヶ月 | 12ヶ月 |
| 最大ファイルサイズ | 5MB | 200MB |
| おすすめユーザー | テキスト中心の個人ユーザー | 画像やPDFを多用する方、複数PJ管理 |
2025年の価格改定により、Standardプランは月額4ドルから利用できるようになり、以前よりもかなり導入しやすくなりました。まずは1ヶ月だけ試してみて、その快適さを体験してみるのも良いでしょう。(出典:Obsidian Sync - Official Site)
複数人でリアルタイム共同編集は可能か
ビジネスの現場やチームプロジェクトでObsidianを使おうとすると、必ず出てくる要望が「Googleドキュメントのように、みんなで一つのノートを同時に編集したい」というものです。会議の議事録を全員で書き込んだり、アイデア出しのブレインストーミングをしたりといったシーンですね。
結論から申し上げますと、ObsidianではGoogleドキュメントのような「リアルタイムの共同編集(同時編集)」はできません。
なぜ同時編集ができないのか?
これは技術的な仕様によるものです。Googleドキュメントなどのクラウドネイティブなツールは、データを文字単位・操作単位でデータベースに記録し、リアルタイムで通信し合っています。一方、Obsidianはあくまで「ローカルにあるファイル」を編集するアプリです。
もし、AさんとBさんが同時に同じファイルを開き、それぞれ違う行を編集して保存ボタン(または自動保存)を押すとどうなるでしょうか?後から保存した人のデータで上書きされてしまうか、システムが「どっちが正しいかわからない!」と判断して「競合ファイル(Conflicted Copy)」という別のファイルを生成することになります。これが頻発すると、フォルダ内が競合ファイルだらけになり、どれが最新かわからなくなる「カオス」状態に陥ります。
チーム運用を成功させるための現実的な解
では、チームでの利用は諦めるべきでしょうか?いいえ、そんなことはありません。同時編集さえ避ければ、Obsidianは強力なナレッジ共有基盤になります。実際に多くの開発チームや研究機関で導入されており、以下のような運用ルールで問題を回避しています。
- 役割分担を明確にする: 「議事録は書記の〇〇さんが書く」「このフォルダは設計チーム専用」といったように、編集権限をルールで定めます。
- ファイルを細かく分ける: 1つの巨大なファイルに全員で書き込むのではなく、トピックごと、あるいは担当者ごとにファイルを分割し、リンク機能でそれらを繋げます。
- Gitを活用する: エンジニア主体のチームであれば、GitHubなどでバージョン管理を行い、Pull Requestベースで変更を取り込む運用が可能です。これなら競合が起きてもマージツールで解消できます。
Obsidianの強みは「情報のストック」と「リンクによる体系化」にあります。フロー情報のやり取りや同時編集はNotionやGoogle Docsに任せ、確定した情報の蓄積場所としてObsidianを活用するという「使い分け」こそが、最も賢い運用方法と言えるでしょう。
Publish機能を使いWeb上で共有する
ここまで解説してきたのは「自分(またはチーム)のための同期」でしたが、Obsidianには「世界に向けた共有」、つまりWeb公開のための機能も用意されています。それが公式サービスの「Obsidian Publish」です。
これを使うと、あなたのVaultにあるノートを選択的に、そして瞬時にWebサイトとして公開することができます。ブログシステム(WordPressなど)との決定的な違いは、Obsidianの最大の特徴である「リンクの繋がり」をそのままWeb上で再現できる点です。
デジタルガーデンという新しい発信の形
Publishで作られたサイトは、時系列に記事が並ぶブログとは異なり、Wikipediaのようにキーワード同士が網の目のように繋がった構造になります。読者は記事を読み進めながら、気になるキーワードのリンクにマウスを乗せると、そのページのプレビューがポップアップ(ホバープレビュー)し、クリックすればそのページへ飛び、さらにそこから別の知識へと旅をすることができます。
また、画面の右側には「グラフビュー」を表示させることも可能で、サイト全体の構造や記事同士の関連性を視覚的に見せることができます。このように、未完成の断片的なアイデアや知識を公開し、植物を育てるように少しずつ加筆修正しながら育てていくスタイルは「デジタルガーデン」と呼ばれ、近年注目を集めている情報発信の形です。
アクセス制限とセキュリティの限界 Publish機能にはパスワード保護機能があり、サイト全体にロックをかけることができます。これにより、「社内メンバーだけにURLとパスワードを教えて共有する」「特定のクライアント向けに資料を公開する」といった使い方が可能です。 ただし、2025年時点では「サイト全体」へのパスワード設定は可能ですが、「Aページは公開、Bページはパスワード必須」といったページ単位での細かいアクセス制御(ACL)は実装されていません。公開用と非公開用を分けたい場合は、Vaultを分けるか、Publish契約を別にするなどの工夫が必要です。
自分の知識体系をそのままインターネット上に展開できるObsidian Publishは、クリエイターや研究者にとって最高の名刺代わりになるはずです。
Obsidian共有における裏技とトラブル対策
さて、ここからは少しディープな領域に入っていきます。「公式Syncは便利そうだけど、どうしても月額コストはかけたくない」「会社のセキュリティポリシーでクラウドが使えない」といった特定のニーズを持つ方に向けた、裏技的な共有方法やトラブルシューティングについて解説します。
Googleドライブを使い無料で共有する技
多くの人がすでに利用しているGoogleドライブ。PC同士であれば、Googleドライブのデスクトップアプリ(パソコン版Googleドライブ)を使ってVaultフォルダをミラーリングするだけで簡単に同期できます。しかし、問題は「スマホ(iPhone/iPad)」との連携です。iOS版のObsidianアプリは、Googleドライブ内のフォルダを直接Vaultとして開くことができません。
ここで救世主となるのが、「Remotely Save」(またはその派生版のRemotely Sync)というコミュニティプラグインです。
プラグインでAPIを叩くという発想
通常、同期はOSや専用アプリが行うものですが、このプラグインはObsidianアプリ自身に「Googleドライブと通信する機能」を持たせてしまいます。具体的には、GoogleドライブのAPIを利用して、Vault内のファイルを直接クラウド上のフォルダと送受信するのです。
- PCとスマホの両方のObsidianに「Remotely Save」プラグインをインストールします。
- Google Cloud PlatformでAPIキーを取得し(少し手順が複雑ですが、解説サイトが多くあります)、プラグインに入力して認証を通します。
- 同期のタイミング(起動時、5分おきなど)を設定します。
これで、iPhoneからでもGoogleドライブ経由での同期が可能になります。さらに、このプラグインはAmazon S3互換のオブジェクトストレージ(Cloudflare R2など)やWebDAVにも対応しています。特にCloudflare R2を使えば、一定量まで通信料無料・ストレージ代も格安で利用できるため、技術力のあるユーザーの間では「最強の無料同期ソリューション」として人気があります。
ただし、あくまで非公式のプラグインであるため、APIの仕様変更で突然使えなくなったり、設定ミスでデータを消してしまったりするリスクは常にあります。「バックアップを必ず取る」「最初はダミーのVaultでテストする」といった自衛策を講じた上で導入してください。
iCloudで同期できない時の解決策とは
iPhoneユーザーにとって最も手軽なiCloud同期ですが、Windows PCと連携させた瞬間に「同期地獄」と呼ばれるトラブルに見舞われることがあります。「ファイルが増殖する」「いつまで経っても同期が終わらない」「Obsidianが起動しない」…これらは全て、iCloud for Windowsの仕様が原因です。
犯人は「空き容量を増やす」機能
iCloud(およびOneDriveなどの最近のクラウドストレージ)には、PCのSSD容量を節約するために、普段使わないファイルをクラウドだけに置いておき、使う瞬間だけダウンロードする「オンデマンド同期(ハイドレーション)」という機能があります。
しかし、Obsidianは起動時にVault内の全ファイルを高速でスキャンしてインデックスを作ろうとします。この時、ファイルの実体がPC上にないと、Obsidianは「ファイルがない!?」とパニックになったり、iCloud側は「一気に大量のダウンロード要求が来た!」と処理落ちしたりしてしまいます。これがトラブルの原因です。
解決策:「常にこのデバイスに保持する」
この問題を解決する唯一にして最強の方法は、ファイルの「実体」を常にPC上に置いておくことです。
- Windowsのエクスプローラーを開き、iCloud Drive内のObsidian Vaultフォルダを探します。
- そのフォルダを右クリックし、メニューから「常にこのデバイスに保持する(Always keep on this device)」を選択します。
- フォルダのアイコンが、雲のマークから「緑色のチェックマーク」に変わるのを確認します。
これを行うことで、オフラインでもファイルが存在する状態になり、Obsidianのスキャンがスムーズに通るようになります。もしそれでもiOS側で起動時に「Waiting for iCloud...」という表示が出て止まる場合は、設定ファイル(.obsidianフォルダ)内のプラグインデータなどが同期詰まりを起こしている可能性があります。PC側で不要なプラグインを削除したり、ワークスペース設定ファイル(workspace.json)を同期対象から外したりするなどのチューニングを試してみてください。
GitHubを活用した高度なファイル共有
もしあなたがプログラマーやエンジニアで、普段から「Git」を使っているなら、Obsidianの同期にGitを使わない手はありません。テキストファイルとの相性が抜群なGitを使えば、単なる同期を超えた強力な管理が可能になります。
PC版では「Obsidian Git」というプラグインを入れるだけで、指定した時間ごとに自動で git add . → git commit → git push をやってくれます。これにより、変更履歴がGitHub(またはGitLabなど)のプライベートリポジトリに完全に保存されます。「あ、間違えて消した!」と思っても、Gitの履歴から特定の行だけを復元することなど朝飯前です。
スマホでのGit運用は修羅の道?
問題はモバイル環境です。Androidなら「Termux」というアプリでLinux環境を作ってGitコマンドを叩けますが、iOSではそうはいきません。iOSでGit同期を実現するには、「Working Copy」という有料の高機能Gitクライアントアプリを使用するのが定石です。
- Working CopyでリポジトリをCloneします。
- 「Repository Sync」機能を使って、そのフォルダをObsidianのVaultとしてマウントします。
- iOSの「ショートカット」アプリでオートメーションを組みます。「Obsidianアプリを開いた時」に「Pull」を実行し、「アプリを閉じた時」に「Commit & Push」を実行するように設定します。
ここまで構築できれば、無料かつ最強のバージョン管理付き同期環境が手に入ります。しかし、セットアップの難易度は非常に高く、マージ競合(Merge Conflict)が発生した際にはスマホ上でコンフリクト解消作業をする必要があるため、Gitの概念を完全に理解している「猛者」向けの方法と言えるでしょう。
社内の共有フォルダで運用するポイント
金融機関や官公庁、大手の製造業など、セキュリティポリシーが極めて厳しく、iCloudやGoogleドライブはおろか、GitHubへのアクセスすら遮断されている環境(いわゆる閉域網)でObsidianを使いたいというニーズもあります。
こうした場合の最適解は、古き良き「社内ファイルサーバー(NAS / Windows Server)」の活用です。
ネットワークドライブ運用
方法はシンプルです。部門の共有フォルダ(Zドライブなど)の中に「Team_Knowledge_Base」といったフォルダを作り、それを各メンバーのPCのObsidianで「Vaultとして開く」だけです。データは社内のサーバー内にしか存在しないため、情報漏洩のリスクは物理的に遮断されます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 外部への情報漏洩リスクがゼロ | 社内LAN(またはVPN)接続時しか使えない |
| 追加コスト不要 | 同時編集による競合リスクが高い |
| 大容量ファイルも高速アクセス | スマホからのアクセスが困難 |
運用ルールの徹底が鍵
この運用でも「競合」の問題はつきまといます。これを防ぐためには、以下のような「運用ルール」を徹底することが重要です。
- デイリーノートの個人化: ファイル名に「2025-05-20_田中.md」のように名前を含め、他人のファイルを触らないようにする。
- 更新専用と閲覧専用の分離: 「マニュアル」フォルダは管理者のみが編集権限を持ち、他のメンバーは読み取り専用にする(Windowsのアクセス権設定で制御可能)。
完全無料で使えるプラグインの選択肢
最後に、コストはかけたくないけれど、技術的な挑戦は厭わないという方のために、コミュニティが生み出した優れた同期プラグインを2つ紹介します。
Syncthing:P2Pでの直接同期
Syncthingは、中央サーバーを介さずにデバイス同士を直接繋ぐ同期ツールです。PCとAndroid端末が同じWi-Fi内にいれば、猛烈な速度で同期されます。データが第三者のサーバーを経由しないためプライバシー性は最強です。ただし、iPhone版の公式クライアントが存在しない(互換アプリはあるが制限が多い)点と、「同期するには両方の端末が起動している必要がある」点に注意が必要です。自宅に常時稼働のPCやRaspberry Piを置いて「中継ハブ」にすると使い勝手が向上します。
Self-hosted LiveSync:自前サーバーで最強環境を
Self-hosted LiveSyncは、技術力に自信がある人向けの「最終兵器」です。自宅サーバーやVPSに「CouchDB」というデータベースを構築し、このプラグインで接続します。すると、公式Syncをも凌駕する「ほぼリアルタイム」の同期が可能になります。カーソル位置まで同期されるほどの高性能ですが、サーバーの維持管理(セキュリティパッチ当てやバックアップ)は全て自己責任となります。「サーバーエンジニアの趣味」として楽しむ分には最高の選択肢です。
自分に合ったObsidian共有方法のまとめ
長くなりましたが、最後に「結局、自分はどれを選べばいいの?」という疑問に答えるためのチャートをまとめておきます。
- 初心者・面倒なことは嫌・仕事で使う: 公式 Obsidian Sync 一択です。時間を金で買いましょう。
- Apple信者(Mac + iPhone): iCloud Drive でOK。ただしWindowsが混ざるなら要注意。
- Androidユーザー・無料にこだわりたい: Autosync for Google Drive などの同期アプリを活用しましょう。
- エンジニア・Gitを愛している: Obsidian Git でバージョン管理の快楽に溺れましょう。
- 企業の閉域網環境: 社内ファイルサーバー(NAS)での運用を検討しましょう。
自分に合った同期方法が見つかれば、Obsidianは「単なるメモ帳」から「いつでもどこでも思考を支えてくれる相棒」へと進化します。まずは小さく試して、あなたのワークスタイルにフィットする形を見つけてくださいね。