
「最高のノートアプリ」という評判を聞いてObsidianを始めてみたものの、なんだか使いにくい、自分には合わないかも……と感じていませんか。SNSやブログでは「第二の脳」「最強のツール」と絶賛されているのに、実際に触ってみるとスマホでの動作がもっさりしていたり、iCloudでの同期がいつまでも終わらなかったりと、想像以上のストレスを感じることが多いですよね。自由度が高すぎる反面、フォルダ構成をどうすればいいか悩んでしまったり、Notionのように直感的なデータベースが作れずに戸惑ったりすることもあるでしょう。
凝った設定やプラグインの導入ばかりに時間を取られてしまい、本来の目的であるはずの「メモ書き」や「思考の整理」がおろそかになって、結局Obsidianをやめたという声も意外と多く耳にします。私自身、最初は真っ白な画面を前に途方に暮れ、何度も挫折しかけました。しかし、いくつかの設定を見直し、使い方のアプローチを変えることで、今では手放せない相棒となっています。この記事では、多くのユーザーが直面する「使いにくさ」の壁を乗り越えて、Obsidianを快適に使いこなすためのヒントを、私の実体験と技術的な背景を交えて徹底的に解説します。
この記事で得られること
- Obsidianが「使いにくい」と感じてしまう具体的な技術的原因と心理的な背景
- モバイル環境での起動遅延や、iCloud同期の不具合を解消するための設定テクニック
- 「どこに保存すればいい?」という迷いをなくすための、シンプルで強力なフォルダ運用術
- どうしてもObsidianが合わない場合に検討すべき、NotionやUpNoteなどの代替ツールの選び方
Obsidianが使いにくいと感じる原因
多くの人が知識を蓄積する「第二の脳」として期待して導入するものの、実際に使い始めると様々な摩擦に直面します。「思っていたのと違う」「維持するのが大変」と感じる背景には、単なる慣れの問題だけではない、ツールの構造的な理由があります。ここでは、なぜObsidianがこれほどまでに使いにくいと感じられてしまうのか、その根本的な原因を技術面と運用面の両方から深掘りして紐解いていきます。
Obsidianのスマホ動作が遅いストレス
「PC版はサクサク動くのに、スマホ版を開くのが億劫で仕方がない」。これがObsidianユーザーが最初にぶつかり、そして最も多くの人が離脱する原因となる大きな壁ではないでしょうか。ふと良いアイデアを思いついた時や、買い物のメモをサッと確認したい時、アプリのアイコンをタップしてからロゴが表示されたまま数秒、ひどい時は数十秒も待たされるのは致命的です。メモアプリにとって「即時性」は命であり、起動に時間がかかるということは、それだけで「使えないツール」の烙印を押されても仕方がありません。
この「スマホ動作の遅さ」は、実はObsidianの「ローカルファースト」というアーキテクチャそのものに起因しています。NotionやGoogle Keepのようなクラウドベースのアプリは、起動した瞬間に画面に必要なデータだけをサーバーから取得して表示するため、初期表示が比較的スムーズです。しかし、Obsidianは起動時にデバイス(スマホ)のストレージ内にある保管庫(Vault)の全ファイルをスキャンし、インデックスを作成・更新しようとします。さらに、導入しているプラグインのプログラムコード(JavaScript)をすべて読み込み、実行可能な状態にする処理も同時に行われます。
ファイル数が数百程度なら問題ありませんが、数千ファイルを超えたり、複雑な処理を行うプラグインを多数入れていたりすると、スマートフォンのCPUパワーでは処理しきれず、長いロード時間が発生してしまうのです。
ここが落とし穴:プラグインの入れすぎ PC版で便利だからといって、「Community Plugins(コミュニティプラグイン)」を無邪気に入れすぎていませんか? 特に「Dataview」や「OmniSearch」、「Excalidraw」といった高機能なプラグインは、起動時の処理負荷が非常に大きいです。「PCでは快適だから」という感覚で同じ設定をモバイルに持ち込むと、スマホのスペックが追いつかず、結果として「使いにくい」という体験に直結してしまいます。
Obsidianの同期が遅いiCloudの罠
iPhoneやMac、iPadといったApple製品を使っている私たちが、同期方法として真っ先に選ぶのは「iCloud Drive」だと思います。OS標準で無料、設定も簡単となれば選ばない理由はありません。しかし、実はこのiCloud Driveこそが、Obsidian最大の「使いにくい」要因になっているケースが非常に多いのです。
Obsidianのデータ構造は、一つの巨大なデータベースファイルではなく、大量の小さなテキストファイル(Markdownファイル)と、設定情報の入ったJSONファイルの集合体です。一方で、iCloud Driveなどの一般的なクラウドストレージは、写真や動画といった「少数の大きなファイル」を同期することには長けていますが、数千、数万という「大量の小ファイル」を頻繁に更新・同期する処理は苦手としています。
その結果、同期プロセスにおいて以下のような深刻なトラブルが頻発します。
- 同期の詰まり(スタック):PCで書いたメモが、スマホ側でいつまで経っても更新されず、古い情報のままになってしまう。
- 競合ファイルの発生:同期が終わっていないのに両方の端末で編集してしまい、「Conflicted Copy」という重複ファイルが大量に生成される。
- 設定の破損:プラグインの設定情報が入った「.obsidian」フォルダ内のファイル同期がズレてしまい、モバイル版を開くとプラグインが勝手にオフになっていたり、設定が初期化されていたりする。
「さっき書いたはずのメモがない」「設定が勝手に変わっている」という体験は、ツールへの信頼を根底から揺るがします。どんなに高機能でも、データが同期されない不安があれば、安心して使い続けることはできません。
Obsidianのフォルダ構成と情報の埋没
Obsidianを初めてインストールし、保管庫を作成した直後の「真っ白な画面」を見て、途方に暮れた経験はありませんか? Obsidianは自由度が高すぎるゆえに、ユーザーに特定のワークフローを強制しません。それはメリットでもありますが、初心者にとっては「どう整理すれば正解なのか分からない」という強烈な決定麻痺(Analysis Paralysis)を引き起こします。
多くのユーザーは、これまでのWindowsやMacでのファイル管理の癖で、ついつい深いフォルダ階層を作ろうとしてしまいます。「仕事 > プロジェクトA > 議事録 > 2024年」のようにきっちりと分類しようとするのです。しかし、Obsidianのファイルエクスプローラーは、深い階層を頻繁に行き来するナビゲーションにはあまり最適化されていません。
フォルダを一つひとつクリックして開閉し、目当てのファイルを探す……という操作を繰り返していると、「情報を探すのがしんどい」というストレスが蓄積していきます。結果として、苦労して分類したはずの情報は、深い階層の底に死蔵され、二度と見返されることのない「埋没したデータ」になってしまいます。これでは、知識を活用するためのツールではなく、単なる「デジタルなゴミ捨て場」を作っているのと同じです。
整理のジレンマ:マインドセットの衝突 Obsidianの真髄は「リンクで情報を繋ぐこと(ネットワーク型)」にありますが、私たちが慣れ親しんでいるのは「フォルダで情報を分けること(階層型)」です。この二つの思想が衝突し、どっちつかずの中途半端な運用になってしまうことが、使いにくさを感じる大きな心理的要因です。
ObsidianとNotionの比較で見える差
「ObsidianとNotion、どっちを使うべき?」というのは永遠のテーマですが、私が普段愛用しているNotionと比較すると、Obsidianの「不親切さ」や「とっつきにくさ」が際立って見えることがあります。特に以下の点での体験ギャップは非常に大きいです。
| 比較項目 | Notion(オールインワン型) | Obsidian(ローカル型) |
|---|---|---|
| 見た目・エディタ | 初期状態で美しく、ブロック単位で画像や動画を自由に配置可能。 | 素っ気ないMarkdownテキスト。画像の配置やサイズ調整には記法が必要。 |
| データベース機能 | プロパティ、フィルタ、並べ替えがマウス操作で直感的に作れる。 | Dataviewプラグインが必要。クエリ言語(コード)を書く学習コストが高い。 |
| スマホ体験 | 読み込み時間は多少あるが、UIはスマホ用に最適化されている。 | PC画面を無理やり縮小したような操作感で、ボタンが押しにくいことも。 |
| Webクリップ | 拡張機能一発で綺麗に保存できる。 | プラグインを入れても崩れることが多く、調整が必要。 |
Notionのように「ブロックをドラッグ&ドロップするだけでリッチなページができる」「データベースを選ぶだけでタスク管理ができる」という体験に慣れていると、Obsidianの「自分で文字を書き、自分で構造を作る」というストイックさが、どうしても物足りなさや使いにくさに映ってしまうのは無理もありません。「なんで画像を横に並べるだけでこんなに苦労するの?」と感じた時点で、Obsidianへの熱意が冷めてしまうのです。
設定疲れでObsidianをやめたくなる
「Obsidianは自分好みにどこまでもカスタマイズできるのが最大の魅力」とよく言われます。しかし、裏を返せば「カスタマイズしないと使いづらい」「未完成のツールである」ということでもあります。
SNSでおしゃれなホーム画面を見かけては新しいテーマを試し、「必須プラグイン10選」といった記事を見ては片っ端からインストールし、見出しのデザインを変えるためにCSSスニペットをコピペして……。そんなことを繰り返しているうちに、いつの間にか「メモを書く時間」よりも「Obsidianをいじって設定する時間」の方が圧倒的に長くなっていませんか?
これはいわゆる「手段の目的化」であり、多くのObsidianユーザーが陥る「設定沼」です。システムを維持・管理するためのメンテナンスコスト(手間と時間)が高くなりすぎると、本来の目的であるはずの「アウトプット」や「思考」がおろそかになります。そしてある日突然、「なんでメモを取るためにこんなに頑張らなきゃいけないんだ?」と我に返り、「もう疲れた、やめたい」となってしまうのです。
Obsidianが使いにくい状態からの脱却
ここまで、Obsidianが「使いにくい」と感じられる理由を洗い出してきました。かなり絶望的に思えるかもしれませんが、実はいくつかの設定を見直し、マインドセット(考え方)を少し変えるだけで、Obsidianは驚くほど快適で強力なツールに生まれ変わります。ここからは、私が実際に試行錯誤してたどり着いた、具体的な解決策と設定テクニックをご紹介します。
Obsidianのスマホが遅い時の設定
モバイル版の起動速度を改善するための鉄則は、シンプルに「起動時に読み込むものを極限まで減らす」ことです。スマホのスペックを上げることはできませんが、アプリの負荷を下げることは可能です。
まず試してほしいのが、PC環境とモバイル環境で設定ファイルを分離し、モバイル用にプラグインを厳選することです。PCでは大画面でグラフを見たり、複雑なDataviewクエリを走らせたりしても構いませんが、スマホでは「テキスト入力」と「閲覧」に特化すべきです。
具体的には、設定の「Community Plugins(コミュニティプラグイン)」一覧を見て、モバイルでの起動に時間がかかっている重いプラグイン(起動時間が表示されるプラグインもあります)を特定し、スマホ側ではオフにします。テーマも、PC用のリッチなものではなく、モバイル向けに軽量化された「Minimal」などのテーマに変更するだけで、動作が軽快になることがあります。
上級者向け:設定の分離テクニック 有料のObsidian Syncを使っている場合は、設定で「Active community plugins」の同期項目をオフにすることで、PCとスマホで有効にするプラグインを個別に管理できます。Git同期などを利用している場合は、モバイル専用の設定プロファイル(configフォルダ)を作ることで、PCでは超高機能に、スマホでは爆速テキストエディタとして使い分けることが可能です。
Obsidianの同期が遅い解消テクニック
もしあなたがiCloudの同期遅延や不整合に日々悩まされているのであれば、最も確実で効果的な解決策は、思い切って「公式のObsidian Sync」への課金を検討することです。
月額費用(執筆時点で月額8ドル〜)はかかりますが、これは単なるストレージ代ではなく、「ストレスフリーな執筆環境への投資」と割り切る価値が十分にあります。公式のObsidian Syncは、一般的なクラウドストレージとは異なり、テキストの差分(変更箇所)のみを高速にやり取りするよう最適化されています。そのため、iCloudとは比べ物にならないほど同期がスムーズで、競合ファイルの発生も劇的に少なくなります。
「どうしても無料でなんとかしたい」というiOSユーザーの場合は、以下の設定を試してみてください。iOSの標準「ファイル」アプリを開き、Obsidianの保管庫フォルダを長押しして、メニューから「ダウンロードしたままにする(Keep Downloaded)」を選択します。これはiOSの機能で、ファイルが勝手にクラウドへ退避(オフロード)されるのを防ぐ設定です。これによって、Obsidianアプリを起動した瞬間に毎回クラウドからファイルを読みに行く挙動が抑えられ、起動速度の向上や同期の詰まりが解消されることがあります。
迷わないObsidianのフォルダ構成術
フォルダ分けで悩んで毎回手が止まってしまうなら、いっそのこと「フォルダで整理するのをやめる」のが最も効果的な解決策です。フォルダは「保存場所」であって「整理場所」ではないと割り切るのです。
私がおすすめするのは、日々のメモはすべて「Daily Notes(デイリーノート)」に書き、それ以外のトピックごとのメモはすべて「Notes」というたった一つのフォルダに放り込むだけの、超フラットな運用です。カテゴリごとに細かくフォルダを作る必要はありません。
- Daily Notesフォルダ:その日の作業ログ、日記、一時的な思いつきなど、時系列の記録はすべてここへ。ファイル名は日付(YYYY-MM-DD)にする。
- Notesフォルダ:議事録、プロジェクトの資料、読書メモ、概念の定義など、日付に依存しない知識はすべてここへ(サブフォルダは作らない)。
- Attachmentsフォルダ:画像やPDFなどの添付ファイル用。
「これで後から探せるの?」と不安になるかもしれませんが、大丈夫です。Obsidianには強力な全文検索と「クイックハイライター(Ctrl/Cmd + O)」があります。ファイル名の一部を入力すれば一瞬で呼び出せますし、関連するノート同士をリンク([[ノート名]])で繋いでおけば、芋づる式に情報が見つかります。この「検索とリンク」主体の運用に変えてから、「このメモはどのフォルダに入れよう?」という迷いが一切なくなり、書くことだけに集中できるようになりました。
Obsidianをやめた人のための代替案
いろいろと設定を試してみたけれど、やっぱりObsidianの「設定の面倒さ」や「Markdownの無骨さ」が肌に合わない……という場合は、無理に使い続ける必要はありません。ツールはあくまで手段ですから、目的に合わせて、より自分にとって「使いやすい」ツールに乗り換えるのも非常に賢明な判断です。
おすすめの移行先と選定基準
| ツール名 | こんな人におすすめ | 特徴 |
|---|---|---|
| UpNote | 「設定不要でとにかく書きたい」人 | Evernoteの正当進化版。フォルダ管理もできて動作も爆速。Markdownを意識せずリッチテキストで書けるため、ライターやブロガーに最適。同期の安定性も抜群。 |
| Logseq | 「箇条書き(アウトライナー)が好き」な人 | Obsidianと同じローカル型だが、最初から日誌形式で始まり、全ての行がブロックとして扱える。リンク機能も強力で、思考の整理に向いている。 |
| Notion | 「見た目やデータベース重視」の人 | やはりWebクリップの保存や、タスク管理、プロジェクト管理にはNotionが一日の長がある。チームでの共有や見た目の美しさを優先するならこれ一択。 |
Obsidianが使いにくい壁を越える
Obsidianが「使いにくい」と感じるのは、多くの場合、私たちが既存のツールの使い方(フォルダ整理や多機能な装飾、完璧な同期)をそのまま持ち込もうとしているからです。「Evernoteのように使いたい」「Notionのように見せたい」と願えば願うほど、Obsidianの設計思想とのズレが大きくなり、摩擦が生まれます。
しかし、「ローカル環境でテキストデータを完全に所有し、リンクによって自分の思考をネットワーク化する」というObsidianの本質的な価値に立ち返り、余計な装飾や複雑すぎるプラグインを削ぎ落としていけば、これほど軽快で、自由で、信頼できるパートナーは他にありません。
まずは「全部やろうとしない」ことから始めてみませんか? フォルダ分けをやめ、プラグインを減らし、シンプルなテキストエディタとして向き合ってみる。そんな「ミニマリスト・スタート」こそが、Obsidianの使いにくさを解消し、最高の知的生産ツールへと変える一番の近道かもしれません。
※本記事で紹介した設定方法やアプリの挙動、価格などの情報は執筆時点のものです。OSのバージョンアップやアプリの仕様変更により、手順が異なる場合があります。最終的なツール選定や課金の判断は、Obsidian公式サイト(Syncの価格等)などの最新情報をご確認の上、ご自身の責任で行ってください。